経理でのAI活用というと、領収書の読み取りや仕訳の自動化を思い浮かべる人が多いと思います。僕も、まず変わるのは入力作業だと考えていました。
ところが、2026年8月18日から24日までのX投稿を追うと、AIの用途は税務調査で聞かれそうな項目の確認、申告書のレビュー、会計ソフトの機能追加まで広がっていました。海外では、168ページある確定申告の準備を複数のAIへ分担させた例もあります。
専門家ではない僕自身が、AIの浸透を学びながら追っていく「AI職場定点観測」。1日目のテーマは経理です。

この記事の注意点
紹介する内容は、Xで公開されている個人や事業者の投稿を要約したものです。勤務先への取材や第三者による事実確認を行った統計ではありません。時間短縮や成果も投稿者の自己申告を含みます。経理業界全体の傾向と断定せず、「この1週間で見つかった変化の兆候」として扱います。
- 今回の観測で見えたこと
- 今回の観測方法
- Xで見つけた「経理とAI」の声10件
- 1. 領収書から仕訳表までを自動化した(8月24日・日本)
- 2. 難しい仕訳自動化から始めて、遠回りした(8月24日・日本)
- 3. 税理士事務所へ1か月入り込み、職員の隣で会計AIを作った(8月23日・日本)
- 4. 過去の申告書から、税務調査の論点候補を探した(8月23日・日本)
- 5. 申告書を3つの立場からAIレビューする仕組みを作った(8月22日・日本)
- 6. freeeに足りない機能を、AIで追加した(8月21日・日本)
- 7. 月次と記帳を短縮し、顧客へ何を生み出すか考える(8月24日・日本)
- 8. 168ページの確定申告準備を、2種類のAIで二重確認(8月23日・海外)
- 9. 請求書を探し、銀行明細と照合して記帳担当者へ送る(8月22日・海外)
- 10. Claude経由でCPA事務所を探す顧客が現れた(8月20日・海外)
- 10件を「経理の工程」と「仕事の変化」で整理するとどうなるか
- ニュースや調査で伝えられている予測と、今回の実態の差
- 日本と海外との差は、AIへ渡す工程に表れた
- 今回の投稿を見て僕が感じたこと
- 経理の職場でまず確認したい3つのこと
- まとめ
今回の観測で見えたこと
直近7日以内の10件を見て、特に気になったのは次の3点です。
- AIの用途が領収書・仕訳の自動化から、申告書レビューや税務調査の事前確認へ広がっている
- 既存の会計ソフトを待つだけでなく、現場が必要な機能をAIで自作する例が出ている
- 効率化した時間を、人員削減ではなく顧客への提案や判断へ使おうとする声もある
今回の投稿では、「経理の仕事がなくなった」という報告は見つかりませんでした。その代わり、AIへ渡す工程が入力から確認へ広がり、人の仕事も作業から判断や顧客対応へ移ろうとしている様子が見えました。
今回の観測方法
- 観測日:2026年8月24日
- 採用期間:2026年8月18日から8月24日まで
- 実際の投稿日:2026年8月19日から8月24日まで(10件すべて直近7日以内)
- 観測場所:Xの公開投稿
- 対象:経理、会計事務所、税理士、確定申告準備などの具体的なAI活用
- 内訳:日本語投稿7件、海外の英語投稿3件
- 確認方法:10件すべての個別投稿ページを開き、本文と投稿日を確認
今回は日本の投稿7件に加え、海外の投稿3件も取り上げました。国によってAIが使われている場面に違いがあるのか、その点も見ていきます。なお、AIサービスや記事の紹介を含む投稿については、その立場が分かるよう注記しています。
Xで見つけた「経理とAI」の声10件
1. 領収書から仕訳表までを自動化した(8月24日・日本)
事業主の投稿では、領収書をスマートフォンで撮影してフォルダへ保存し、ChatGPTに日付、金額、勘定科目を読み取らせ、スプレッドシートへ自動入力する流れを作ったと紹介しています。
ここから読み取れること:領収書の転記は、汎用AIと手元のファイルを組み合わせて自動化できるところまで来ているようです。ただ、税務上の正確さや確認にかかる時間は投稿から分からないので、実際の使いやすさはもう少し見ていく必要がありそうです。
2. 難しい仕訳自動化から始めて、遠回りした(8月24日・日本)
公認会計士の投稿では、経理でAIを使っていると聞いても、実際にはチャットで質問する段階にとどまる例が多いとしています。本人の事務所でも、最初にもっとも手間のかかる仕訳自動化へ着手し、遠回りしたそうです。
ここから読み取れること:効果が大きそうな工程から始めることが、必ずしも近道ではないようですね。まずは正解を確認しやすい小さな作業から始めて、慣れてから複雑な仕訳へ広げるほうが進めやすそうです。投稿には本人の記事紹介も含まれていました。
3. 税理士事務所へ1か月入り込み、職員の隣で会計AIを作った(8月23日・日本)
会計AIを開発する投稿者は、税理士事務所へ1か月滞在し、職員からその場で話を聞き、その日のうちに作って触ってもらう方法を試したと紹介しています。
ここから読み取れること:経理へAIを入れるときは、離れた場所から要望を聞くだけでなく、実際の作業や例外をすぐそばで見ることが大切なのかもしれません。ただし、この投稿は会計AI事業者によるもので、本人のサービスや記事の紹介につながる発信でもあるようです。
4. 過去の申告書から、税務調査の論点候補を探した(8月23日・日本)
税理士の投稿では、税務調査の連絡を受け、過去3年分の申告書をClaudeへ渡して調査官が確認しそうな項目を尋ねたところ、実際に交際費の按分と役員報酬の変動について聞かれたと述べています。
ここから読み取れること:AIの利用が記帳後の確認だけでなく、税務調査への事前準備まで広がり始めているようです。ただ、この一例だけでAIが税務調査を予測できるとは言えません。申告書を外部のAIへ入力するときの情報管理も気になりました。
5. 申告書を3つの立場からAIレビューする仕組みを作った(8月22日・日本)
税理士とみられる投稿者は、申告書、決算書、固定資産台帳、元帳をAIが確認するツールを作ったと紹介しています。担当スタッフ、所長税理士、税務調査官という異なる立場からレビューする仕組みです。
ここから読み取れること:同じ資料を複数の立場からAIに見てもらうという発想は面白いですね。ただ、自作ツールがどこまで正確なのかは投稿から分からないため、最終的な判断は人が持つ必要がありそうです。
6. freeeに足りない機能を、AIで追加した(8月21日・日本)
税理士・公認会計士の投稿では、Claudeを使ってfreee向けのChrome拡張を作り、月次推移におけるマイナス残高の強調表示などを追加したと紹介しています。簡単な機能なら数分で形になったそうです。
ここから読み取れること:AIは会計処理だけでなく、現場で感じていたソフトの小さな不便を自分たちで直すためにも使えるようです。ただ、セキュリティや会計ソフトの仕様変更、その後の保守まで考えると、作れた時間だけで効果を判断するのは難しそうです。
7. 月次と記帳を短縮し、顧客へ何を生み出すか考える(8月24日・日本)
税理士の投稿では、freeeとAIによって月次処理が早くなり、記帳の手間も減ったと述べています。そのうえで、削減した時間を人手削減だけで終わらせず、顧客が言葉にできていない悩みを探す仕事へ使いたいとしています。
ここから読み取れること:効率化で空いた時間を何に使うかまで考えている点が印象に残りました。AI導入は時間短縮だけでなく、その後に人がどんな仕事をするのかまで考えることが大事になりそうです。
8. 168ページの確定申告準備を、2種類のAIで二重確認(8月23日・海外)
海外の投稿者は、毎年会計士へ渡す168ページの確定申告資料について、今年はClaudeとCodexに準備を任せたと述べています。一方のAIを作業役、もう一方を確認役のように使い、二度レビューしたそうです。
ここから読み取れること:一つのAIへ任せきりにせず、別のAIを確認役にする使い方は面白いですね。ただ、最終的には会計士へ渡していて、AI同士で確認しても同じ間違いを見逃す可能性は残りそうです。
9. 請求書を探し、銀行明細と照合して記帳担当者へ送る(8月22日・海外)
海外の投稿者は、ChatGPT Workを使い、過去1か月の請求書を探して銀行明細と照合し、記帳担当者へ送れることに気づいたと投稿しています。
ここから読み取れること:請求書を探して入出金と照らし、人へ渡すところまでの準備をまとめてAIへ任せる使い方のようです。短い投稿なので照合の正確さまでは分かりませんが、人とAIが前後の工程を分ける形は増えていくのかもしれません。
10. Claude経由でCPA事務所を探す顧客が現れた(8月20日・海外)
海外のCPA事務所に関わる投稿者は、AI検索を意識した情報発信を進めた結果、サイトへのアクセスが増え、Claudeを使って事務所を見つける顧客が現れたと述べています。
ここから読み取れること:AIは会計事務所の中の仕事だけでなく、顧客が事務所を探す方法も変え始めているのかもしれません。ただ、アクセスが5倍になったという数字は本人の発信によるものなので、AI施策だけの成果とは言い切れなさそうです。
10件を「経理の工程」と「仕事の変化」で整理するとどうなるか
| 工程 | 今回見つかった変化 | 人に残っていること |
|---|---|---|
| 入力・記帳準備 | 領収書読み取り、請求書検索、銀行明細との照合 | 漏れ・重複・勘定科目の確認 |
| 申告・税務確認 | 申告書レビュー、税務調査の論点候補抽出 | 税務判断、説明、最終責任 |
| ツール改善 | 会計ソフトの機能をAIで自作 | セキュリティ、保守、仕様変更への対応 |
| 導入・開発 | 現場へ入り込み、その日のうちに改善 | 例外の発見、職員への定着 |
| 顧客対応 | 空いた時間で提案、AI検索からの顧客流入 | 対話、信頼、価値の設計 |
今週の投稿では、AIが入力を代わるだけでなく、「何を詳しく確認するか」を先に示す例が増えていました。人間の確認は消えていませんが、すべてを最初から見るのではなく、AIが絞った候補を確認する形へ変わりつつあります。
ニュースや調査で伝えられている予測と、今回の実態の差
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」では、企業側が2030年までに減少が速いと予想する職種の中に、会計士や監査人が挙げられています。ニュースでは、こうした調査をもとに「AIで経理の仕事が減る」という部分が大きく伝えられることがあります。
一方、今回の直近7日の投稿で見つかったのは、人員削減の報告ではなく、仕訳の準備、申告書の確認、税務調査への備え、会計ソフトの改善でした。作業を減らした先で顧客への提案を増やそうとする声もあり、現場では「何人減るか」より「人の時間をどこへ移すか」が先に動いているように見えます。
ILOの2025年の推計は、世界の労働者の4人に1人が何らかの生成AIの影響を受け得る職業に就いている一方で、多くの仕事は消滅より変化が中心になるとしています。今回の10件も、職業全体が消えるより先に、仕事内容の配分が変わっているという見方に近いものでした。
日本と海外との差は、AIへ渡す工程に表れた
日本の7件では、仕訳、申告書、税務調査、会計ソフトなど、税理士や会計事務所の専門業務へAIを組み込む例が目立ちました。既存の会計ソフトへ機能を足す使い方も、日本側で見つかった特徴です。
海外の3件では、納税者側が申告資料を準備する、請求書を銀行明細と照合して記帳担当者へ渡す、顧客がClaudeでCPA事務所を探すという例が見つかりました。会計担当者だけでなく、会計士へ資料を渡す側や事務所を探す側にもAIが入っています。
ただし、日本7件・海外3件の小さな観測なので、導入スピードの優劣は判断できません。今回は「日本は専門業務の内側」「海外は会計士へ渡す前後」という違いが見えましたが、次の経理観測でも同じ差が出るかは継続して確認します。
今回の投稿を見て僕が感じたこと
経理でのAI活用は、領収書を読み取ったり仕訳を作ったりするところから始まると思っていました。もちろん、その使い方も実際に出ています。ただ、直近1週間だけを見ても、申告書のチェックや税務調査で聞かれそうな項目の確認まで進んでいるのを見ると、やはり経理の仕事とAIは親和性が高いのかなと思いました。
会計ソフトに足りない機能を、現場の人がAIを使って自分で作っている例などは、AIエージェントを使っている人ならではの発想で、その辺がAIチャットしか使っていない人との大きな差になっている気がします。
一方で、難しい仕訳の自動化から始めて遠回りしたという投稿もありました。これも業務を細かい作業単位に分けてみて、AIがサクッとこなせそうなものから仕組みを作ってみる。うまくいったら、もう少しやらせてみる。そんな感じで切り分けていくやり方のほうが、成功事例も生まれて、次々と進んでいくのかもしれないですね。
海外はさらに進んでいる部分もあると思いますが、切り口が違ったりして、いろいろ見ていると面白いですし、参考になりますね。
経理関係はAIに持っていかれる仕事としてよく話題に出ますが、当面は「AIを使える経理担当」になるのが良いのかもしれませんね。引き続き観測しながら、みなさんと共有していきたいと思います。
経理の職場でまず確認したい3つのこと
- AIへ渡す工程と人が承認する工程を分ける:仕訳作成、照合、税務判断を一つにまとめず、それぞれの責任者を決めます。
- 機密資料を入力できる契約か確認する:申告書や銀行明細には重要情報が含まれます。個人向けAIへそのまま入れないよう確認します。
- 短縮時間の使い道も決める:作業が減った後、確認品質、顧客対応、改善活動のどこへ時間を移すかを考えます。
会社でAIを使う前の基本は、生成AIの社内ルールを作るときの考え方で整理しています。表計算の作業から試したい場合は、AIをExcel業務へ取り入れる考え方も参考にしてください。
まとめ
2026年8月18日から24日までの経理投稿10件では、領収書や仕訳の自動化に加え、申告書レビュー、税務調査の論点抽出、会計ソフトの機能自作までAI活用が広がっていました。
今週の中心は「経理がなくなった」ではなく、「AIへ渡せる工程が入力から確認へ広がった」という変化です。これからも日本と海外の新しい投稿を追いながら、経理の仕事がどう変わっていくのかを見ていきたいと思います。
